第2回 ローカルSGDsオンラインセミナー
開催レポート

-地域の対話を促すために:問いのデザイン-

株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO/東京大学大学院 特任助教 安斎勇樹 氏

株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO
東京大学大学院 特任助教安斎勇樹 氏

地球環境パートナーシッププラザ(GEOC) 江口健介 氏

地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)江口健介 氏

令和2年12月15日に『第2回 ローカルSDGsオンラインセミナー -地域の対話を促すために:問いのデザイン-』を開催しました。

地域循環共生圏づくりプラットフォームの活動として、実践地域等登録制度企業等登録制度にご登録頂いている活動団体・企業の方々を対象に、オンラインセミナーを開催しました。

第2回は「問いのデザイン」をテーマに、対話を促すための方法やワークショップデザインなどの研究者であり、各地でファシリテーターとしてもご活躍の安斎勇樹氏にお越しいただき、地域でのつながりを作っていく上での基本的な考え方や対話を促す方法(問いのデザイン)について話題提供していただきました。

第2回オンラインセミナーの概要

日時令和2年12月15日(火)15:00~17:00
場所オンライン開催
主催環境省
テーマ地域の対話を促すために「問いのデザイン」
地域での人のつながりを考えるにあたっての基本的な考え方や地域での対話を促す方法を学ぶ
登壇者株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO/東京大学大学院 特任助教 安斎勇樹 氏
インタビュアー地球環境パートナーシッププラザ(GEOC) 江口健介 氏

講演:安斎勇樹 氏

安斎氏にとってのファシリテーションとは

ファシリテーションとは、個人、チーム、会社、地域などの抑制されたポテンシャルを生かすことだと考えています。ポテンシャルは、人だけではなく地域にもあり、本当はこういう価値がある、本当は住民にとってもっとこういう地域になる…そうしたポテンシャルが必ずしも発揮されているとは限りません。それを引き出したり、開放したり、よりよく活かす、これがファシリテーターの仕事だと思っています。また、どんなプロジェクトをやる時も、そこに関わる人の「衝動」を大切にしています。人、組織、地域などの創造性を高めるためには、一人一人の衝動の蓋を外してあげることが根幹であり、それに対して、良い問いを投げかけるという「問いのデザイン」と、遊び心ある活動を作っていくという「遊びのデザイン」をテーマとして活動しています。

なぜ「問いのデザイン」なのか

うまくいかない問題があるときに、能力、モチベーション、制度、組織風土などのせいにされることがありますが、チームが向き合っている問いがデザインされていないことが大半の原因だと思っています。問いの設定が間違っていると、良いアイデアは生まれません。暗黙の前提が固定化してしまい、新しいことが考えられなくなる状態というのはいたるところにあります。人が目の前の問題を正しく捉えられなくなる時に、向かい合うべき問いを立て直すことによって、本当に解くべき課題の設定をすることができるのです。これが、問いのデザインが大事である理由だと考えています。

「問いのデザイン」をする上でのポイント

企業とか地域の課題解決に必要な問いとは、問う側も問われる側も答えが分からないものです。みんな答えが分からないから、みんなで一緒に考えるきっかけとして「問い」を立てます。また、「問題」と「課題」が違うことを理解することも必要です。「問題」とは、何かしらの目標があり、それに対して動機づけられているが、どうしたらそこに到達できるのかが良く分からない状態のことを言います。何が本当の問題なのか、という解釈が人により違うため、どう解決していくのか目線が合いません。そうしたときに、そこに関わる関係者が、これが解決すべき問題だと前向きに合意して初めて「課題」になります。なんとなく「問題」を共有していると思ってしまいますが、それをきちんと「課題」として定義することが、問いのデザインをする上で大事なポイントです。

課題設定の罠:よくある失敗パターン

課題設定する上で、目標設定がずれていることが多くあります。正しい課題設定をするためには、よくある失敗パターンを理解した上で、課題を立て直し、目標を立て直す必要があります。目標を転換することを「リフレーミング」と言いますが、その技術を身につけなければなりません。地域のプロジェクトにしても企業のプロジェクトにしても、この課題設定の罠は頻発します。よくある失敗パターンをご紹介します。

(1)自分本位:問題を立てる人の視点に偏っており、関係者や社会的意義が欠如している。
(2)自己目的化:手段が自己目的化し、本来の目的などが欠如してしまう。
(3)ネガティブ・他責:課題の設定が後ろ向きになっている。
(4)優等生:耳触りが良い優等生的な課題で対話が深まらない。
(5)壮大:設定された課題が壮大すぎる。

目標を転換するリフレーミングのパターン

目指す目標が悪いと課題設定ができないため、目標を転換するリフレーミングのパターンを学ぶ必要があります。リフレーミングのパターンには、「利他的に考える」や「前向きにとらえる」というパターンがあります。三浦半島の活性化の事例では、最初は「三浦半島の観光客が減っている。どうしたら若者に来てもらえるのか。」という自分本位な課題を立ててしまったのですが、これを「橘久美子(設定した架空の人物)にとって三浦半島でしか味わえない経験価値とは何か。」とリフレームしました。自分たちで課題を捉えてしまうと、どうしても先入観があるため、それに対してリフレーミングのパターンを使いながら、違った形の目標に立て直すということが非常に大事になってきます。

組織における対話の必要性

暗黙の思い込みにとらわれてしまう「認識の固定化の病い」という問題があるのですが、これが厄介なのは、二次災害を引き起こすのです。例えば、上司と部下がお互いに「頭が固い」と言い合っているような状態で、アイデア発想研修をしても意味がありません。問題とは、「適応課題」と「技術的問題」の2つがあると言われています。「技術的問題」は知識やノウハウが足りなくて解けない問題ですが、企業や地域などの集団の中で起きている問題とは、関係性の中で生じている問題「適応課題」です。ひとりひとりの当事者の認識が全然違う、暗黙の前提が違うまま関係性が固まってしまって、良いコミュニケーションが生まれなくなっている。その場合は、前提が食い違いすぎてしまっているので、対話するしかありません。対話というのは、お互いがなぜこんなに前提が違うんだろうということを分かり合い、新しい共通の前提を作ることです。

大人はなぜ協力するのか

大人はなぜ協力するのか、協調学習や人の協力について研究している益川弘如(マスカワ ヒロユキ)先生に聞いてみたところ、「一人じゃ解決できないからじゃないでしょうか。」というシンプルな回答をいただきました。いろいろな協調学習の研究において、『一人では解けない構造を持った課題があり、その課題に対して「この人がいないと解けない」という認識がそろわないと、人は協力しない』と書かれています。これはすごく面白くて、いい課題がないと人はつながらないのです。どういう問いを設定してみんなで話し合うかというところが、いいコミュニケーションを生み出す鍵になると言えます。

意見交換

後半は、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)の江口健介氏にもご参加頂き、対話を促す問いの立て方や参加者のコミットメントを引く出すポイントなどについて、意見交換を行いました。

「正しい問い」はあるのでしょうか?

安斎氏

安斎氏:「正しい問い」というのはないと思います。問題の当事者の中での納得度や、実際に関係性がより良くなるのか、結果として良い話し合いが生まれるのか、実践のなかで効果があるかどうかがすごく重要になります。ファシリテーターは観察が重要で、事前段階では仮説を立てますが、参加者の反応を見て、問いを微調整したり差し替えたりする必要があります。観察とセットで試行錯誤していくことが重要になるというのが答えの中心です。人の衝動のようなものを大事にして、関係者が考えたくなっている問いかどうかを判断します。「いいですね、ちょっと考えたいな!今から話します?」のような衝動が沸く問いかどうかを、判断のポイントに入れたいと思っています。

話し合いがうまくいかないときには、どうすれば良いでしょうか?

安斎氏:うまくいかないときの解決策の一つとして、「なんか、うまくいっていないな」と感じたら、参加者のグループに入って「話しにくいですか?」と聞くことがあります。そうすると、参加者が勝手に問いをリフレームしてくれるときがあります。問いがうまくいかないときは、「この問いは、なぜうまくいかないと思いますか?」と聞いてしまうのが、一番の必殺の問いですので、うまくやろうとしないで、そのように聞いてしまうというのも重要な手法として持っておくといいと思います。

日常的に「問いのデザイン」の考え方を取り入れるためにできることはあるでしょうか?

安斎氏:日々、自分に投げかける問いが自分の創造性やパフォーマンスをあげる上ではすごく重要です。「即効性のある問い」と「遅効性のある問い」を自覚して、自分の中で切り分けたり、遮断したりしないと、日々の仕事のパフォーマンスコントロールができないという話があり、これは最近面白いなと思いました。他責の課題設定を地域のプロジェクトでしてしまうとまずいのですが、ずっと自分のせいにし続けてもつらいということがあったりするので、そこで問いをうまく使い分けて、自分にいい塩梅で投げかけられるというのは、日常に置いてすごく大事だと思います。

江口氏:ワークショップの現場における参加者の世代の分断をどう乗り越えてきましたか?

安斎氏:世代間のギャップのようなものは如実に出ます。チームビルディングでワークショップを活用するといったときに、事前に参加者のバランスを考えたり、広報の努力をするというのがまず前提としてあります。さらに、共通のフォーマットというか、“この指とまれ”に成功しさえすれば、もう年齢差はあまり関係ありません。関係性が悪い人たちに、「皆さん関係性が悪いので対話しましょう」と言っても上手くいきません。気づいたら関係性が改善するような対話が起きてしまうような課題を設定して、ついやってしまうということをやらなければいけません。そういう時には、なぜやるのかを丁寧に説明する前提で、両世代が協同できる遊びを作ることをまずやります。

江口氏:参加者からコミットメントを引き出すためのポイントはありますか?

安斎氏:ファシリテーションの前提として、自分たちがいなくなっても組織や地域が上手くいくようにしなければならないと思っています。できれば、プロジェクトの前半のうちにクライアントチームやその地域の人の中に、将来を背負って立つであろう潜在的キーマンを見つけ出す必要があります。その人が主体性を発揮するようにターゲティングして、その人の変革プロジェクトとして進めます。ですので、これまでのプロジェクトでも、KPI(Key Performance Indicator)としては、アイデアがどうだったかというよりは、その人がスーパーファシリテーターになることがとても重要だと思っていたので、そこをすごく重視してやっていました。一人でもいいからキーマンを見つけ出して、その人の覚醒を支援するようなことをする必要があります。

江口氏

江口氏:適切な表現か分かりませんが、「地域にファシリテーションの機能を委譲する」という発想は非常に重要なのかなと思いました。また、ビジョンを作るということが地域循環共生圏構築事業の中でも当たり前のように言われていますが、地域で暮らしてる人からすると再来年くらいまでの話がリアルで、長期的なビジョンとどちらも大事だと感じます。いきなり大きな問いを投げないというポイントもありましたが、フォアキャスティングとバックキャスティングのバランスについて意識していることはありますか?

安斎氏:フォアキャスト、バックキャストという話では、「ビジョン」と「衝動」のような対立軸が分かりやすいと思っています。あるべき論から逆算して行うプロジェクトは、リスクヘッジ的に未来を作るのには効果があります。一方で、ボトムアップでクリエイティブなプロジェクトにするには、エネルギーに欠けるところがあり、自分事になりにくいという課題もあります。参考程度に未来を描いて、未来はこうなるよねと意識しながら、自分たちがどうしていきたいのかという「衝動」の割合を半分より減らしてしまうと厳しいなと思っています。プロジェクトにより具体的な比重は違うのですが、必ず「衝動」の割合が50%を切らないようにするという感覚は持っています。

実際にキーマンに場を委譲していくためのポイントはありますか?

安斎氏:当日なんとなくファシリテーションをするのではなく、ロジックでプロセスの設計の意図をファシリテーションしながら説明します。そのようなメタ的な会話をしながら、ファシリテーションをするというのが一つあります。もう一つは、ワークショップとワークショップの間に宿題を出します。そうすると、依頼者が自主的な勉強会のようなことをして、その場はキーマンがファシリテートするということが起こります。そのように、自力でファシリテーションする場や自分たちのチームを牽引していく場と、ファシリテーションされながら参加する場があったため、相対化しやすかったのではないかなと思います。徒弟制度のように技術伝承していくときに、先生と教えられる側の関係性は、モデリング、コーチング、スキャフォールディング、フェイディングという順番をたどって継承されるとされています(詳細は、「認知的徒弟制」参照)。ずっとやらせ続けるだけではなかなか技術継承できないので、こういうフェーズを意識するといいと思いますし、三浦半島のプロジェクトではそのような要素がちりばめられていたのかなという気もします。

江口氏:冒頭で人のポテンシャルに着目されているとお聞きし、なるほどと思いました。例えば何かのワークショップの参加者で、必ずしも肩書や所属がその人のコミュニティでの役割やスキルと一致しないというケースがあるのではないかと思います。所属などに縛られない役割やスキルの可視化だったり、そのような明文化されていない役割の発揮を促したりすることが、今後ますます地域でいろんな人が協働するときに重要だと思います。そのあたりの可視化や力の発揮を促す上で、人のポテンシャルと絡めて工夫されていることはありますか?

安斎氏:部分として切り出された1割、2割ではなく、その人をその人として扱わないと、その組織自体がうまくいかないと言われており、ファシリテーターとしてもすごく大事にしたい部分だと思います。人の隠れてる部分、見せてない部分にこそ、その人の衝動のツボがあったり、イノベーションのヒントがあったりするのです。How(どのようにするのか?)は難しいのですが、小手先のテクニックではどうにもならない部分だったりします。小手先のテクニックを一応紹介するとすれば、あるメーカーのプロジェクトで、「あなたらしい仕事道具は何ですか?」という問いを立て、それぞれ道具を3つ持ってきてもらうところからチームビルディングを始めたことがあります。工場のマネージャーが「靴紐」を持ってきたり、意外なその人のこだわりを道具として持ってきてもらうことで、肩書とは結びついていないところにその人の仕事のこだわりがあったりして、「あ、そうなんだ!」とお互いに興味を持つところから始めることができました。

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