第1回 ローカルSGDsオンラインセミナー
開催レポート

-地域の主体性はなぜ重要か?-

西粟倉村 地域創生推進室 参事 上山隆浩 氏

西粟倉村
地域創生推進室 参事上山隆浩 氏

株式会社トビムシ 代表取締役 竹本吉輝 氏

株式会社トビムシ
代表取締役竹本吉輝 氏

令和2年11月26日に『第1回 ローカルSDGsオンラインセミナー -地域の主体性はなぜ重要か?-』を開催しました。

地域循環共生圏づくりプラットフォームの活動として、実践地域等登録制度企業等登録制度にご登録頂いている活動団体・企業の方々を対象に、オンラインセミナーを開催しました。

第1回は「地域の主体性」をテーマに、地域資源を活用した取組を実践されている、西粟倉村 上山氏、株式会社トビムシ 竹本氏にお越し頂き、地域での取組事例や取組を進める上でのポイントなどについて話題提供頂きました。

参加者の方々からも多くのご質問を頂き、地域循環共生圏づくりにもつながる非常に幅広いキーワードについての本質的な意見交換を行うことができました。

第1回オンラインセミナーの概要

日時 令和2年11月26日(木)10:00~12:00
場所 オンライン開催
主催 環境省
テーマ 地域の主体性:地域での取組事例を通じて、主体性を持つことの重要性を学ぶ
登壇者 西粟倉村 地域創生推進室 参事 上山隆浩 氏
株式会社トビムシ 代表取締役 竹本吉輝 氏

講演①:西粟倉村 地域創生推進室 参事 上山隆浩 氏

西粟倉村 地域創生推進室 参事 上山隆浩 氏

「百年の森林構想」を中心とした西粟倉村での取組

西粟倉村は、中国山地の分水嶺、岡山・鳥取・兵庫の県境に位置し、村の93%が森林、そのうち84%がスギ・ヒノキの人工林の地域です。森林という地域資源を踏まえ、平成20年に「百年の森林構想」掲げました。「上質な田舎」をビジョンとして、現在は、再生可能エネルギーを中心とする地域内循環の仕組みづくり、「百年の森林構想」を基本理念とした林業チャレンジに加え、ローカルベンチャーによる地域人材流入・産業の多様化という3つの柱で取組を進めています。

村が思ってきた「上質な田舎」とは

これまでの西粟倉村での取組を振り返ると、以下の要素で取組を進めることだと考えています。その次に、「誰一人取り残さない」という要素が入ります。
要素①:自然・社会資本価値を最大にする。
要素②:ローカルベンチャーなど多様性に溢れた社会をつくる。
要素③:地域経済が循環している社会をつくる。
要素④:環境・レジリエンスが高い社会をつくる。

「百年の森林構想」効率的森林整備×6次産業化による森林資本の価値の最大化

「百年の森林に囲まれた上質な田舎」を目指し、衰退する一次産業にフォーカスし、自治体・地域としてチャレンジするという50年先のビジョンを掲げています。また、自治体は、個人所有の森林について責任を持って集約化・施業を図り、出てきた木材については、民間企業が6次化によって付加価値化を図るプロジェクトを行っています。このように、ビジョンとプロジェクトが同時に進行していることによって、都市部の人たちに対しても共感・共有が得られるような発信力につながっていると感じています。

「森林資本の価値の最大化に向けた新たなチャレンジ

令和2年の8月には、国内では初となる「森林商事信託」の第1号ができました。西粟倉村でも森林の約31%が不在村者であり、そのような方々に森林を預けてもらう必要があります。しかし、行政や森林組合が行うことが難しいため、都市部の信託銀行に任せ、森林整備による収益を信託銀行を通じて受益者にお返しする仕組みを開発しています。また、さまざまなデータを地域の中で見えるようにオープンデータ化して課題解決につなげようと、「スマートフォレストシティ・プラットフォーム」の構築を進めています。

自治体SDGsモデル事業では、「森林REdesign」として、尾根部分や里山林については、木材生産以外の利用をすることで、山全体の価値を木材生産だけではない価値の体系に誘導していくことを大きなテーマにしており、その中で木材事業だけではない新たなビジネスが展開できるのではないかと期待しています。

最後に

地域が主体的に動くという点については、地域の住民だけで主体的に動くことは難しいため、まちの関係人口やローカルベンチャーを通じた多様な人と連携しながら、その中で地域が主体的に動いているというのが今の西粟倉の取組だと思っています。

上山氏のご講演動画はこちらからご視聴頂けます。
https://youtu.be/Hshx0QWWYG4

講演②:株式会社トビムシ 代表取締役 竹本吉輝 氏

株式会社トビムシ 代表取締役 竹本吉輝 氏

環境問題・社会問題の自分ごと化

気候変動危機を含め、環境問題を本当に自分ごと化できるのか、ということにこの四半世紀ずっと向き合ってきました。自分ごと化できない個人とその集合としての共同体があり、身近な川の汚染や健康被害が生じると、人は自分ごと化しやすいですが、社会や地球環境に関わることになるとどうしてもそれができない。そのために法政策的なアプローチだけでは、なかなか難しいと実感していました。そもそも環境問題・社会問題というものを自分ごと化するためには、マイクロな取組や営みがあり、その総和としてのマクロな取組があるというような指向性が重要ではないか、そのような考え方でないと、全体としてのサスティナビリティを担保するのは難しいのではないかという仮説があり、株式会社トビムシを作りました。

地域ごとにマイクロな取組を有機的につなげる

地域循環共生圏は、西粟倉村での取組のように、地域が自分たちで自立・分散型社会を形成していくということを、地域外から来た人たちも含めて、自律的、自主的に主体性をもって進めていくことだと思います。また、地域経済の側面からも、マクロなアプローチでは、地域財政・地域経済の改善を目指すことや地域の経済循環を作ることが難しいため、地域ごとのマイクロな取組を実現し、それが有機的につながった結果としてのマクロな数字があるという「地域経済エコシステム」のアプローチへの期待が高まっていると感じます。

令和時代の「ポスト地域商社」に求められること

個別に対応することで、計画可能性・予測可能性を高めて効率性を追求するのではなく、地域固有の社会構造全体を踏まえ、価値の長期最適化を目指した取組を、組織(的運動)体として進めていこうという流れに確実になっています。西粟倉村に限らず、トビムシが関わっている地域は自然発生的にそうなっていると感じます。また、経済活動に限定されることなく、地域の持続性を保持するために必要不可欠な要素までを担わなければならないと考え、地域に向き合っています。

各地域での事業を通じて、「自然を基(起)点」とした可能な限りの「地域(周辺)価値循環」を目指しています。一番の典型が木材ですが、切り出した木をそのまま移動させると6~7割以上は水と空気を運ぶことになってしまいます。しかし、木を地域内で加工することで、地域内でも使用し、そのお裾分けを周辺地域や都市部に提供することができ、エネルギー的にも経済的にも合理的だと考えています。

社会的選択肢を残すために

経済発展それ自体はポジティブに捉えていますが、一方で、社会的選択肢が圧倒的な早さでなくなっていることに危機感を持っています。例えば、愛媛県内子町の伝統的な町家などの町並みは、地域の素材があり、それをつなげるための技術があり、その技術を持った職人さんがいることで形成されています。福岡県八女市では里山賃貸住宅を作りましたが、99%は地域の素材であるスギを使用し、地域の職人だけで作りました。これらが可能なのは、地域の価値体系やそれを支える技術体系、技術体系を支える共同体のようなものが全体として残っているためです。まるまる全体が残らない限り、技術や職人は残せず社会的選択肢を維持できません。

地域が必要とすることに真摯に丁寧に向き合っているか

西粟倉村や海士町など、地方創生の先進事例として紹介されている地域は、地域が必要することに対して、大変な苦難苦汁を抱えながらも、真摯に丁寧に向き合っている地域ということだと思います。取組を進める上でのポイントは、結果が出ているかではなく、自分たちの本質的な課題に本気で向き合っており、目をそらさないことだと思います。

海士町では、バス運転手の担い手が集まらないという課題に対して、役場職員をしながら、バスの運転手もできるという「半官半x」の制度づくりに関わりました。また、ふるさと納税を原資に、民間の意思に基づいて未来の島のプロジェクトに投資をするための「未来投資基金」という仕組みも作っています。

岐阜県の飛騨市では、森林の7割が広葉樹林であるため、針葉樹林業ができない。林業での地域再生は無理だという話になりますが、そうではなく飛騨匠がいるというのは、様々な広葉樹があったからなので、それらをつなげる仕組みづくりを始めました。サクラの木を商品化するために、サクラの木を伐り続けるのではなく、サクラ、タモ、ナラなど伐採された木に応じて商品づくりをやっていくことが、地域の森の持続可能性に一番資するのではないかと考えています。

トビムシを始めた12年前は、地域に産業を作ってほしい、雇用を作ってほしいと依頼されていたのですが、今では、人もつれてきてくれないと地域に人がいませんという話になります。森づくり、人づくり、まちづくり、空間づくりまで広げて考えることは、地域循環共生圏を体現しようとすると必然なのだと思います。何かの一つの産業で、地域全体を引っ張っていくのは不自然で難しい。その中で、人づくりやまちづくりまで広げていかざるを得ないということだと思います。

意見交換

地域での取組がうまく回るまでにどれくらいの時間がかかりましたか?

上山氏:西粟倉村では平成16年の平成の大合併の際に新しい価値を提供するという流れを作り始めましたが、それはずっと続いています。決して、森林の事業が安定しているわけではなく、仕組みをその都度変えることで、必要な仕組みを加えていくということを延々と続けています。また、ローカルベンチャーは、通常のビジネスよりも長いスパンでみる必要があり、まだまだ安定しているという状況ではないと思います。成果が出ているように見えると思いますが、絶えず見直しながら、努力を続けているというのが現状です。

地域の外の人や新たな人を巻き込むために工夫されていることはありますか?

上山氏:森林資源はもっと多様な資源や活用方策があると考えており、知見やノウハウを持つ企業や機関と連携することが重要だと思っています。令和2年の7月には、「西粟倉むらまるごと研究所」という一般財団法人を立ち上げました。研究機関と連携する専門組織があり、このような新しい機能、足りない機能を作ることで、新しい人との連携によって得られた成果を活用し、新しいビジネスの展開や仕組みづくりを担っています。

観光産業に関して地域の知名度を上げるためや外から人を呼び込む上での情報発信・PRをどのように行っていますか?

上山氏:西粟倉村では、観光という表現は使っていませんが、例えば先進事例に取り組めば視察で宿泊する人が増える、というように、すべての取組を観光につなげるという発想を持っています。「森林REdesign」においても、森林産業がヘルスツーリズムなどと観光とも密接な関係にあります。情報発信については、行政は情報発信が下手なので、民間企業の活用するウェブサイトやアプリを開発支援し、運営を任せることが一番効率的だと思っています。

地域で人材を集める、担い手を育てるためにはどうすればよいですか?

上山氏:地域の課題に対するビジョンをしっかり引き出す作業をする必要があります。もう一つは、プロジェクトとして課題解決する仕組みを運営することが重要です。プロジェクトとして動き出すことで、どのような形で参加できるのか見えてくるため、課題に対して、どう具体的にアプローチしようとしているのか見えることが重要だと思います。また、地域に関わりたいという人たちに、どうアプローチしてサポートしていくのかが非常に重要だと思っており、西粟倉村では株式会社エーゼロが行政と一緒に伴走していく仕組みがあります。行政はそればかりに関わることはできないので、中間支援の仕組みを組織の中に位置付けることが重要だと考えています。

竹本氏:地域がこういう人に来てほしいと明示することが、お互いにとって長期的に一番大事だと思います。育成に関しては、行政でも民間企業でも事業体によって変わりますが、例えば、木工職人を育てるということであれば、行政は何もできないため、それぞれの事業主体に3~5年くらいの時間軸でしっかり向き合ってもらうことが重要だと思います。

どのようなところから地域の一連の取組が始まるのか?きっかけや仕掛けはあったのか?

上山氏:西粟倉村では、平成16年に合併しないと決断してから地域再生の検討をしている中で、アミタホールディングス株式会社の熊野英介氏から「地域の人が良くて、山がある、この資源をどう活かすのか?」という提案があったことが一つのきっかけになっているかもしれません。その後、西粟倉村でローカルベンチャーの第一号といわれている「木薫」や「西粟倉・森の学校」ができてきました。また、小さな村なので、意思決定のスピードが早かったことが、影響しているかもしれません。民間企業の人からは、今日決めてほしいという話が多く出てきますが、行政としての判断が早かったため、ここでやっても良いかなということになったのではないかと思います。

竹本氏:まずは、「地域構造の見える化」と「本来的課題の見える化」の2つが重要だと考えています。西粟倉村であれば村の8割が人工林、飛騨市であれば7割が広葉樹なので、その資源に向き合わないということはあり得ないわけです。きっかけとして属人的にリーダーシップを発揮することが大事ですが、その人が地域の本来的な課題から目を逸らしていないということが極めて大事です。合理的に、短期的に判断しようとすると、本来的な課題からは目を逸らすということになりがちですが、西粟倉村では当時の村長を含め、向き合っていただきました。地域の人が、そこから目を逸らしてはいけないということに合意してくれたということが、圧倒的に大きな点だと思います。

人材育成について、行政と中間支援組織の連携はどうあるべきでしょうか?また、地域に足りない人材を確保するのは難しいのではないでしょうか?

上山氏:人材育成は長いスパンでサポートする、伴走することが重要です。一方で、小さな役場だと行政だけではやりきれないため、行政はファイナンスを用意した上で、知識がある、専門的に担うことができる人を別に立てる必要があると思います。国の支援制度等を活用しながら、地域の中間支援組織が成果を上げる仕組みを作ることで、より効率的な支援をすることができます。また、行政は中間支援組織をどう作るかに注力し、情報発信は発信力を持つ組織に任せるなど、行政はプロデューサーに近い位置で事業を進めることが重要だと思います。

竹本氏:人口数千規模の地域であれば、その地域に入り込んで、暮らしながら地域の人たちと対話を続けることによって、地域に必要な人材が見えてきます。それを伝えるには、地域の覚悟や本気度が重要であり、本気で取り組んでいれば伝わります。地域や事業主体が本気で取り組んでおり、長期スパンで地域において必要なことだと認識されれば、関係者や周辺の人がそれに対してポジティブな情報を重ねてくれるため、情報として伝わり、人は来ると思います。そこを丁寧に行うことが、地域にとっても、来る人にとっても大事だと思います。

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